名古屋地方裁判所 昭和24年(ヨ)341号 決定
申請人
大槻長蔵
外十名
被申請人
扶桑ゴム工業株式会社
主文
被申請人会社が昭和二十四年九月十八日附で申請人等に対してなした解雇の意思表示はその効力を停止する。
理由
労働基準法第二十条によると使用者が労働者を解雇するためには三十日前にその解雇の予告をなすか、又は即時これを解雇する場合には三十日分以上の平均賃金の支払をせねばならぬことを原則とするしかるに申請人等提出の疏明資料を見ると、被申請人会社は昭和二十四年九月十八日申請人等に対し即時解雇に付する旨の通告をなしたに拘らずその際労働基準法所定の三十日分以上の平均賃金の支払(若しくは支払の提供)をしていないのである。右のような予告手当金の支払を伴わない即時解雇の意志表示は、法律上その効力を生じ得ないのであつて、申請人等は依然被申請人会社の従業員たる地位を保有しているものと称せねばならぬ。
しかして、被申請人会社が申請人等を被解雇者として取扱いその就労を禁止し給料の支払を停止するときは、申請人等は忽ち生活に窮し当人及びその家族は著しい苦境に立つべきことは申請人等の疏明資料によつてこれを窺うに難くないから、申請人等の本件仮処分の申請はその保全の理由をも具備するものと言うことができる。
よつて、本件仮処分の申請を相当として認容し、申請人等から金一万円の保証を立てることを条件として主文のように決定する次第である。